セロトニンを整える暮らし①「セロトニンって何? ― 繊細さと脳の関係」
2025年05月28日 13:50
なんだかしんどい──が口ぐせになっていませんか?
「ちゃんと寝たはずなのに、なんだか疲れが取れない」
「ちょっとしたことでイライラしてしまう」
「不安ってほどじゃないけど、気持ちがざわついている」
「呼吸が浅い感じがして、息がしづらい」
「気づいたらずっと、ため息ばかり」
そんな日が続いていたら──
それは、“気持ちの疲れ”のサインかもしれません。
そして、その裏にあるのが、
セロトニンという目には見えないホルモンの存在です。
セロトニンって、聞いたことありますか?
「幸せホルモン」とも呼ばれるこの物質。
特別な人だけのものではなく、誰の脳の中にも存在していて、
生きていくうえで自然に働いている“生理的なしくみ”のひとつです。
脳の奥深くにある“セロトニン工場”のような場所
(縫線核〈ほうせんかく〉)から分泌されており、
感情
姿勢
呼吸
自律神経
ホルモンのリズム
私たちが**「心地よく、安心して生きる」**ために必要な働きを、
広く支えてくれている存在です。
昔の人は、セロトニンを知らなくても整っていた
「セロトニン」
この言葉を初めて聞く方も多いかもしれません。
そして、こんなふうに思うかもしれません。
そんなもの知らなくても、みんな普通に生きてきたじゃない?
たしかにそうです。
飢きんがあっても、戦争があっても、
私たちの祖先は、セロトニンの存在なんて知らずに乗り越えてきました。
それでも生きられたのは、
【“セロトニンが自然と育まれる暮らし”】が、そこにあったから。
朝になれば目覚め、歩いて働き、よく噛んで食べる。
誰かと語り合い、寄り添い、感謝を伝えながら眠る──
そんな“人間らしい時間”の中で、
セロトニンは自然に分泌され、私たちを守ってくれていたのです。
そして、
今よりも圧倒的に情報の少ない時代に文明が発展できたのは、
本能や感覚、そしてセロトニンによって支えられた冷静な判断力があったから
なのかもしれません。
けれど今は──
社会は大きく変わりました。
朝日を浴びずに暮らせる家。噛まなくても飲める食事。
孤独でもつながった気になれるSNS。
私たちのDNAは何万年もかけてつくられたのに、
たった数十年で生活の形は激変しました。
そして今、気づかぬうちに、
セロトニンが分泌されにくい毎日を過ごしている人が増えています。
それに加えて、現代は──
かかるストレスの「質」も「量」も、昔とは桁違い。
人間関係の複雑さ、終わりのない情報、止まらないタスク。
便利になったはずの社会で、
私たちは常に緊張や不安にさらされるようになりました。
そして、セロトニンはストレスによって減少しやすい性質を持っています。
つまり今は、
【セロトニンが育ちにくく、さらに減りやすい】という、
“ダブルの困難”を抱えている時代なのです。
だからこそ、いま改めて──
【「セロトニンを意識して整える」】という選択が、必要になってきているのです。
私に起きていたこと
私は、ごく普通の生活を送っていたつもりでした。
でも今振り返ってみると、
セロトニンが不足していたような状態だったのかもしれません。
睡眠、感情の波、集中力の低下、過敏な反応……
それらは後になって、「セロトニンが関係していた」と気づけたことでした。
がんばることが当たり前だった頃。
眠っても疲れが取れず、ちょっとしたことで涙が出たり、
まるで感情のコントロール装置が壊れたような日々でした。
イライラしてしまう自分がイヤで、
でも抑えられなくて、家の中の空気がどんよりしていく。
子どもたちにもその空気が伝わっていたと思います。
それでも、「私さえ我慢すれば…」と、ひたすら無理をしていました。
セロトニンの働きと“エネルギー切れ”
気分を安定させる
自律神経のバランスを整える
睡眠のリズムに関わる
緊張やイライラを落ち着かせる
呼吸を自然に整える
こうして見ると、
疲れやすさ、気分の波、眠れなさ、息の浅さ──
思い当たることが、いくつもあるかもしれません。
さらに、セロトニンは、
夜になると“睡眠ホルモン”と呼ばれるメラトニンへと変化します。
つまり、夜ぐっすり眠るためにも、
日中にセロトニンがしっかり分泌されていることが土台になるのです。
けれど、これは「気合いでなんとかなる」ものではなく、
知らないうちに減っている“目に見えないエネルギー”のようなもの。
さらに、セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンなど、
他の神経伝達物質とのバランスを整える役割もあり、
これが不足すると感情のブレーキが効かなくなることもあるのです。
「私のせいじゃなかったのかも」と思えたとき
心療内科で「セロトニンの話」を聞いたことがあります。
でも、当時の私はそれを「自分のこと」として受け取る余裕すらなかったのです。
職場を離れて、ようやく少しだけ自分の時間が取れるようになってから、
私はやっと、自分の状態を見つめ直すことができました。
疲れではなく、“消耗”。
気持ちではなく、感情を支える力が静かに切れていたのかもしれません。
そしてそこで初めて、
「セロトニンがどうして必要だったのか」が、自分の中に落ちてきたんです。
知ることで、やさしくなれる
セロトニンは、感情のゆらぎや疲れに影響している、
目には見えないけれどとても大切な存在でした。
私自身、ようやくその存在に気づき、
少しずつ「自分の感覚」を取り戻せるようになってきました。
そして何より、
「私のせいじゃなかったのかも」と思えたことが、
それまでの自分をやさしく受け止める第一歩になったのです。
さらに、「あ、今ちょっとぶれかけているかも」と気づけるようになり、
どう立て直せばいいか、自分で選べる感覚が少しずつ育っていきました。
次回予告
セロトニンは、生活の中で自然に増やしていくことができます。
次回は、私が日常に取り入れてきた小さな習慣についてお話しします。